懲戒解雇されたら転職できない?

目次
懲戒解雇とは
懲戒解雇とはどのような制度なのかというと、会社の経営者が雇っている労働者に対して行うことができる行為のひとつになります。
経営者は、自分が雇っている労働者が、会社の秩序を乱してしまったり、会社のイメージを大きく損なうような行為をしたときなどに、制裁罰則をすることができるのですが、そのことを懲戒解雇といっております。
よくテレビドラマなどで、大きな失敗をしてしまった会社員の方が、上司に怒られてクビだと告げられるようなシーンを良く見かけると思いますが、厳密にいえば、上司の方にはその権限はなく、懲戒解雇をすることができるのは、事業主だけなのです。
但し、懲戒解雇は非常に重い罰則になりますので、そう簡単に懲戒解雇にすることができません。
特に就業規則上の規定に違反していることが明確であるような場合や、適正な手続きをすることができる環境、第三者の方などに解雇の合理的な理由を説明することができるなど、色々と厳しい条件をクリアしなければ、懲戒解雇にすることができないのです。
最近では、懲戒解雇にされた方が、懲戒解雇した人に対して取り消しを求める裁判なども頻繁に起こっておりますので、事業主もそう簡単に懲戒解雇にできない状況です。
普通解雇の条件
懲戒解雇の事を理解するためには、普通解雇と懲戒解雇の違いについて理解することが一番です。
一般的に普通解雇の場合には、使用者が一方的に労働契約を解約することです。
ただし、いつでも解雇してよいというわけでなくやむを得ない理由がある時に限るといった条件が付与されております。
このやむを得ない条件として挙げられるのが、採用した時に履歴書などに嘘の経歴を記載し、経歴詐称をしていた場合や、勤務成績がかなり悪い場合、そして雇った方が、会社の業務とは関係のないことが原因で病気やケガをしてしまい、働くことができなくなったなどの理由が挙げられます。
会社のパワハラなどが原因でうつ病になってしまった従業員は普通解雇することができませんが、休日にドライブしていて交通事故により復職が難しいような場合には、普通解雇ができる可能性があるのです。
普通解雇の条件は、日本の法律らしく非常にあいまいな部分があります。
どこからどこまでが普通解雇をすることができ、どこからどこまでが普通解雇に当たらないのかは、社会通念上相当であることなどと照らし合わせて検討することが重要になります。
しかし、普通解雇であっても最終的な手段となっておりますので、そう簡単な話ではありません。
懲戒解雇の条件
普通解雇と比べ、後々の影響が大きい懲戒解雇は、非常に重い処罰になっております。
その為、普通に働いている方が懲戒解雇になることはありません。
懲戒解雇を宣告するためには、懲戒解雇になっても仕方がないと思われるような理由が必要なのです。
懲戒解雇をする理由として最も多いのが、業務上の地位を利用した犯罪行為です。
例えば、経理を担当している方が、バレないように不正にデータを改ざんし横領していたり、取引先の社員の方からリベートを受け取っていたりなどの業務上の地位を利用した犯罪行為は懲戒解雇になります。
会社の名前を著しく傷つけることも懲戒解雇の理由になります。
例えば、強姦や殺人、強盗、痴漢などは懲戒解雇の理由になります。
また、動画配信サービスで社会的にNGな内容の発言をしたり、会社のデータを流出させたりなどは懲戒解雇になります。
また、最近増えて来ているセクハラやパワハラ、モラハラなども懲戒解雇になる理由として挙げられます。
セクハラやパワハラ、モラハラなどは、他の従業員の方に対して悪影響を与えていることはもちろんの事、社会的に会社の評判を落とすことにも繋がります。
その為、従業員から訴えられる前に懲戒解雇するという流れが生まれてきているのです。
懲戒解雇の傷跡
懲戒解雇は普通解雇と比べて、非常に厄介な存在になります。
懲戒解雇の場合には、普通解雇で必要とされていた30日前までの解雇予告が必要ありません。
また、一般的に即日解雇をする場合には、30日相当のお給料を支払わなければいけない解雇予告手当が必要でしたが、懲戒解雇の場合には、労働基準監督署の除外認定を受けることで支払わなくても大丈夫になります。
当然かもしれませんが、懲戒解雇の場合には、退職金などが減額されたり全く支払われないといった事もあります。
いきなり次の日から会社に来なくても良いと伝えることができますので、懲戒解雇になった方は、次の就職先を探す時間もなく、突然無職になってしまいます。
また、懲戒解雇になってしまうと、次の就職先を見つけることがとても大変です。
なぜ大変なのかというと、懲戒解雇によって退職した中途採用の方が就職活動で面接にたどりついたとしても、前職を辞めた理由を聞かれてしまうからです。
懲戒解雇をされたことを正直に話すと、やはり面接官の方は悪い印象を与えてしまいますし、悪い印象を与えないために、嘘をついたり誤魔化してしまうと、これまた懲戒解雇の理由として挙げられる経歴詐称に繋がりますので再就職が本当に大変なのです。
弁護士に相談しよう
懲戒解雇になりそうになってしまったら、会社の就業規則を確認するようにしてください。
実は懲戒解雇という判断を会社が下すためには、懲戒解雇する条件が就業規則や雇用契約書に記載されているのです。
逆に言えば、就業規則や雇用契約書に懲戒解雇する条件が記載されていない場合には、懲戒解雇を免れることができる可能性があるのです。
もしあなたが懲戒解雇と言われて、即日解雇になってしまった場合には、解雇理由証明書の発行を会社側に申請するようにしましょう。
そこに書かれている理由は、懲戒解雇する条件として就業規則や雇用契約書に記載されたものであるかどうかを確認してください。
就業規則や雇用契約書に記載されている懲戒解雇の条件が、非常にあいまいでどちらともとれるようなケースもありますので、正当かつ客観的な意見を聞くために、弁護士に相談するようにしましょう。
懲戒解雇だけでなく、不当解雇を含め解雇時に弁護士に相談する方も増えております。
そのため、そういった事案を得意としている弁護士事務所も増えてきました。
弁護士に相談することによって、懲戒解雇を取り消してもらう可能性もありますし、そもそも解雇の撤回などの可能性もありますので、あきらめずに相談するようにしましょう。
懲戒解雇になったら
もしあなたがいわれもないことで懲戒解雇になってしまった場合には、そのまま泣き寝入りせずに、弁護士に相談し会社と対峙するようにしましょう。
懲戒解雇は、そのままにしてしまうと就職することが難しくなりますし、人生を生きる上で、あなたの足を引っ張る大きな傷になってしまいます。
中にはワンマン企業で懲戒解雇を社長の独断で決行するケースもありますが、弁護士を入れることで懲戒解雇を撤回するような事例もあります。
先ほどご紹介した懲戒解雇の理由に当てはまらない場合には、必ず泣き寝入りせずに弁護士に相談してください。
懲戒解雇されてしまい、反論の余地が無いような場合には、気持ちを切り替えて転職活動をしなければいけません。
そういった時には、懲戒解雇をしていても、比較的再就職しやすい企業を選んで転職活動をしなければいけません。
例えば、銀行や警備会社などはクリーンな経歴が求められますので、懲戒解雇になった方は厳しいかも知れません。
また、同じ県内や近隣の同業他社のいうのも、情報が流出している可能性がありますので、避けるべきだと言えます。
懲戒解雇されてしまった場合には、転職エージェントサービスや専門の支援業者などの力を借りながら再就職を目指すのが一般的です。