個人事業主も失業保険を受給できるの?

どんな職業の方でもほとんどの方が仕事を失うと今後の生活が心配になります。
しかし何らかの保障があると気持ちが少し楽になるかもしれません。
国の制度として、会社員やパート・アルバイトの方が退職すると、条件を満たしていれば失業保険を受給できますが、個人事業主が事業を辞めた場合も失業保険は受給できるのでしょうか?
失業保険の制度や受給要件、個人事業主の備えなどについてお伝えします。
失業保険はどんな制度?
失業保険(雇用保険)は、労働者が失業した際に、労働者の生活の安定と再就職を支援するための制度です。
労働者が失業保険を受給するには、在職中に雇用保険に加入していることが条件の1つになります。
つまり雇用保険に加入していない方が無職になったとしても、失業保険は受給できません。
では、どのような方が雇用保険に加入できるのでしょうか?
雇用保険の加入条件
雇用保険は、「事業主に雇われており、雇用期間や週の労働時間が一定の条件を満たしている人」が加入できます。(「雇用期間や週の労働時間の一定の条件」とは、31日以上引き続き雇用されることが見込まれていることと、1週間の所定労働時間が20時間以上であることです。)
事業主に雇われていることが条件となるため、雇う側である個人事業主は雇用保険に加入することができません。
よって、個人事業主が無職になったとしても失業保険は受給できません。
副業で起業した人は?
会社に勤めながら副業として起業した方は、個人事業主でありながら本業の勤務先で雇用保険に加入することができます。
では、この方が副業を続けながら(=個人事業主でありながら)会社を退職した場合、失業保険を受給できるのでしょうか?
残念ながら受給できません。
というのも失業保険は無職になった方が受給できる制度です。
雇用保険に加入していた方でも、副業があり無職でない場合は受給でません。
逆に会社は辞めずに副業のみを辞めた場合も同じです。
この方が受給できるのは、本業も副業も辞めた時になります。
こんな時は個人事業主でも受給できる
個人事業主は事業を辞めて無職になっても失業保険を受給できませんが、無職の方が個人事業主になった場合、要件を満たせば受給できることがあります。
個人事業主になった方が失業保険を受給できる例
失業保険には、求職活動中の生活を支援するために90日~360日間(期間は年齢や離職理由などにより異なる)受給できる「基本手当」とは別に、就職促進を目的とする「再就職手当」というものがあります。
「再就職手当」とは離職して失業保険の基本手当を受給し始めた方(もしくはこれから受給される方)が、就職や事業を開始すると受給できる手当で、事業を開始したばかりで収入に不安がある時の支えになりますね。
再就職手当の受給要件
再就職手当の受給にはいくつか要件があり、起業した日の翌日から1ヶ月以内に申請しなくてはいけません。
<事業を開始した方の再就職手当受給要件>
1.失業保険の基本手当受給期間が、3分の1以上残っている
2.失業保険受給手続きの1週間後以降に(前職の退職理由により失業保険の給付制限がある方はさらに1ヶ月を経過してから)事業開始の準備を始めた
3.1年を超えて事業を安定的に継続できると認められる
4.事業開始前3年以内に「再就職手当」と「常用就職支度手当」を受給していない
詳しい要件や提出書類については、事業を開始しようと思った時点でハローワークへ相談することをお勧めします。
特に3の「1年を超えて事業を安定的に継続できる」と認められるために、どのような書類を用意するのかは前もって確認しておきましょう。
再就職手当の額
受給額はいつ事業を開始したかにより異なります。
基本手当受給期間を3分の2以上残して事業を開始した場合は受給残日数の70%、3分の1以上残した場合は受給残日数の60%を受給できます。
※基本手当日額とは、離職した直前6ヶ月間の賃金や年齢により算出された1日当たりの失業保険受給額で、上限は6,195円(60歳以上65歳未満は5,013円)です。
表 再就職手当受給額
基本手当受給残日数 | 再就職手当受給額 |
3分の2以上 | 基本手当日額 × 基本手当受給残日数 × 70% |
3分の1以上 | 基本手当日額 × 基本手当受給残日数 × 60% |
<例>
基本手当日額が5,000円で、基本手当受給期間が90日の人が、受給日数を40日(受給期間の3分の1以上)残して事業開始の準備を始めた場合の受給額
基本手当日額×基本手当受給残日数×60%=5,000円×40日×60%=120,000円
この場合、再就職手当を12万円受給することができます。
退職前の方は事業開始準備の時期に注意
今後事業を始めるために退職を考えている方は、事業開始の準備を始める時期に注意が必要です。
万一退職前から準備を始めると、再就職手当のみならず基本手当も受給できない可能性があります。
なぜなら、失業保険の基本手当は事業をまだ開始していなくても、開始の準備を始めるだけで受給できない場合があるからです。
失業保険を受給するために事業開始準備を遅くするのか、それとも受給せずに早く始めるのか、人によりベストなタイミングは異なります。
よく検討したうえで始めてください。
個人事業主が備えておきたいこと
個人事業主は事業を辞めざるを得なくなったとしても失業保険を受給できないため、普段から自分で備えておく必要があります。
貯蓄を増やすことはもちろんですが、病気やけがで働けなくなった場合に備えて就業不能保険に加入しておくという方法もあります。
また、ご自身だけでなく従業員やその家族を守るために、国などからの助成金などもチェックしておきましょう。
失業保険を受給することは難しいですが、それ以外の制度や保険・共済などを上手に利用して備えておきたいですね。